ステージだより
霧けぶる八ヶ岳倶楽部の緑の中
銅板画家の大川みゆきさん、陶芸家の山夲順子さんによる二人展が開催です。
腐食銅版画と陶芸。
金属と平面表現、土と立体表現。
ぐーっと、紙や釉薬のその奥まで覗き込んでみたくなる魅力は、
女性的な優雅さの中に息衝く力強さがあり、
会場では、一見交わりそうのない二つの表現の見事なハーモニーを感じられます。
お二人に共通するのは自身の感性、五感、身体の表現を
作品の中に落とし込んでいるという点。
主となるテーマは、"いのち"。
自然、時間、音、影、空間、誰かの息遣い。
私たちも何気なく触れている日常を、
一歩踏み込んで切り取ったような静かな熱を感じます。
大川みゆきさんの作品の主だった技法、
エッチング(腐食銅版画)は凹版画の技法のひとつです。
インクを凹部に詰め、紙をプレスすることでインクを移し、印刷される凹版画。
木版画や判子のように印刷する部分を残す凸版画とは逆の印刷方法です。
エッチングでは、金属面に針などで描いたラインを更に腐食させ、凹部を完成させます。
腐食に掛ける時間を掛けただけ線は太く、深くなっていきます。
大川さんの作品は腐食の工程に2~3カ月かけることもあるそう。
じっくりと時間を掛けて育てられた線は厚みがあり、糸のような存在感があります。
モチーフとされる植物はその影、枯れ行く姿まで愛おしく
感じるという大川さん。
膨らみ、やがて散りゆく「いのち」の流れを柔らかく描いています。
『流れる』
水彩や鉛筆を使ったドローイングも
光と空間、空気の揺らぎを感じる作品です。
1m弱の大作品から15cmほどの小作品まで、
50点以上の作品を一挙にご覧いただけます。
陶芸家の山夲順子さんは粘土もご自身で採掘されています。
その過程で天然の水晶などの鉱石も採れるそうで、
水晶や自然金と粘土を組み合わせたアクセサリーも
ギャラリーにて、常設で展示販売しております。
電気、ガス、灯油窯が使い分けられ、
土や石、鉱物から様々な表情が生み出されます。
それぞれの窯でしか生まれない表現があるそう。
土に与えられたテクスチャーと釉薬の色と厚みが溶け合って、
自然が生む形の奥にある、生々しさそのもののような魅力に
思わずそっと触れてみたくなります。
水面や海、波をイメージした食器たち。
かつ、緑や花との相性も抜群です。
鉱石が作る色は、様々な場所に合わせやすい自然な色味。
1200度を超える高温の中、それぞれ融点の違う材料たちが
噛み合い、融けあって生まれた表情は
いつまでも飽きずに眺めていられる奥行きがあります。
しっとりと心地良い森の中でリラックスした後は、
ステージに是非お立ち寄りください。
ペレットストーブの優しい暖かさに包まれながら、
森で感じた『生命の息吹』を凝縮した作品展で
二人の作家の目線から、
違った角度の自然の美しさを堪能してください。
(有安)
大川みゆき・山夲順子展
『光彩の海原 An Ocean of Luster』
会期:6月23日(木)~6月28日(火)
OPEN 10:00~17:30
最終日、16:30まで。
お問い合わせは八ヶ岳倶楽部「ステージ」まで。
TEL 0551-38-3395