柳生直子 森からのたより

2017年10月31日
日本の自然のなかで出会う色の、今と昔のお話。

いま、ギャラリーで始まっている、橙緑屋 齋田次郎さんの風呂敷とショール展では、日本の伝統的な「重ねの色目」をヒントにして染められているものが数多くあります。齋田さんの作品を見ていたら、八ヶ岳倶楽部の森の中にも、そういった日本の伝統的な色が数多くあることに、気がつかされました。壮大な時を経て、昔人と、現代に生きる私たちを、この色たちが自然を通して繋いでくれているように感じます。

平安時代から鎌倉・室町時代にかけて、当時の貴族の人々は、「季」というものを大切にし、服の色には、季節ごとに様々な色目が選ばれてきました。その多くは、自然の植物に関わるもので、移ろいゆく自然の表情が感じられるものでした。いま、このかさねの色目を見ることで、昔人がいかにその季節による配彩美を表したかを、私たちも共有できるのです。なんだか、とってもワクワクします!


今の秋の倶楽部の森のなかであるものと言えば・・・

まずは、「落栗色 (おちぐりいろ)」

実り落ちた栗の色を表した、暗い赤褐色を言います。源氏物語の「行幸」にも、「青鈍の細長一襲、落栗とかや、何とかや、昔の人のめでたうしける袷の袴一具・・・」とあり、当時の愛好の色目だったことがわかるようです。

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その「落栗色」を染めて、モミジのデザインを施した作品がこちら。

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さて、では今度は、クイズ形式にします(笑)

さあ、この茶色と薄水緑色・・・なんの色目でしょうか?!

平安時代に動物(昆虫です)に因んだものは、ふたつくらいしかありませんが、、、、そのひとつであり、夏の色になっています。

DSC_0071.jpgちょっと難しかったかな・・・

答えは、、、「蝉の羽 (せみのは)」です! 夏の薄衣に広く用いられたようですよ。蝉の羽化の時の身体の色と、幼虫や成虫の時の色を配したのでしょうか?! 

(下の写真は、今年7月に八ヶ岳倶楽部の森で羽化した蝉の写真です)

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ちなみに、もうひとつ動物からとった色目は、玉虫色だそうです。納得ですね!(これは、てくてくツアー担当の山田君が発見してくれた、珍しい玉虫色のゾウムシ!)

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最後にもうひとつ・・・春の色 「山吹(やまぶき)」

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山吹に因んだ色目は、昔から色んな組み合わせがあるようですが、齋田さんは、山吹色に萌黄色を併せ入れて染めています。山吹の名は、山振(ヤマフキ)、すなわち枝が風に吹かれて揺れやすいことからきているといいます。源氏物語、紫式部日記、狭衣物語などの物語や日記にもよく見られ、拾遺和歌集にも、菅原輔昭が「春風は のどけかるべし やへよりも かさねてにほへ 山吹の花」と詠っています。この短歌を書いたしおりを、この山吹色の作品を買ってくださったお客さまに、齋田さんはプレゼントしているそうです。


どうですか?

日本人に生まれた私たちは、こうして自然からインスピレーションをもらって、様々な文化を形作ってきたのですね。

そんなことを考えながら、、、、八ヶ岳倶楽部の森を散歩してみるのも、きっと面白いですよ。  

首には、齋田さんのショールを巻きながら、ね(*^_^*)!

              (参考文献 「かさねの色目 平安の配彩美」 長崎盛輝 青幻舎)

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