2009年02月21日(土) 山梨日日新聞
冬の太陽を虫たちと謳歌

八ケ岳南麓(なんろく)にある僕の家は標高一三五〇メートル。この土地の春は本当に遅い...。五月のゴールデンウィークでもまだ霜が降りるわけでして。そんな植物にとって厳しく思える環境の中で、ゆうゆうとその寒さを味方につけている花があるんです。
 フクジュソウ。漢字で書けば福寿草。なんともめでたい名前の花ですね。よくお正月に花屋さんに出回ります。黄色い色が寒い冬をあったか~くしてくれますよね。
 しかしこの花があったか~くしてくれるのは僕らだけではなかったのです!
 二月まだ雪も残るような季節にムクムクと芽を伸ばしてくるフクジュソウには敬意すら覚えます。よくぞ春を連れてきてくれた。よくぞこの厳しい冬を乗り越えてくれたな。よくぞ...よくぞ...。
 一方でカメラを構えながらふと考えるのです。『何故この厳しい季節にわざわざ咲くのだろう?』と。
 誰もが知っているとおり花は花粉を運んでくれる虫を呼び寄せるために色々な工夫をしています。色鮮やかになったり、いい香りがしたり、そして美味しい蜜(みつ)を蓄えたりして。でもフクジュソウの咲くこの季節、どんなに華やかに咲いたって寒すぎて虫がいないのです! つまり頑張って咲く意味がないのですよ。
 ある年の早春、花を見ながら分かったことがありました。フクジュソウは晴れているときしか咲かないということです。まるであったか~い太陽の光をむさぼり集めているかのように!そしてなんと、黄金色の花の中に虫が集まっているではないですか! まるでその貴重な冬の太陽を一緒に謳歌(おうか)しているように。
 ある本を読んでビックリ。なんと晴れた日のフクジュソウの花の中はなんと十度以上になっているそうです。太陽が出るとまるでパラボラアンテナのように花びらが開いてきます。しかもその花びらはロウ細工のようにつやがあるのでより日光を花の中心に集めるのでしょう。
 寒さで凍えた虫たちの気持ちになればそこはまるで冬の温泉。林中の小さな虫が集まるのも納得ですね。元気になった虫は花粉を体中につけ花から花へ飛び回るという自然界のドラマ。それを知ってますます心があったまってきた!
 福寿草。まさにその名のとおりこの八ケ岳に福を運んでくれる花でした。


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