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2008年10月11日(土) 山梨日日新聞
「だだら」黄色に染まる秋

「だだらの木」。
 これは僕が十歳のころ、家族旅行で八ケ岳に初めてやってきた時に覚えた木の名前です。
 約三十年前の四月二十九日。標高一○○○メートルを超えるこの林ではまだ木々は芽を出していません。葉がないせいで、グルッと見渡すことができるその雑木林の中でチラチラ、ちらちらっと見える黄色い小さな花の固まりはなんだろう? 今にして思えば「サンシュユ」の花のようですね。あちこちにあります。
 あれは「だだらの木」、「やたらある木という意味」と地元の方が教えてくれました。限りなく簡潔な答えでしたが「だだら」が「やたら」と言うのもなんだかおかしかった。
 ところが図鑑に出ていません。やっとのことで調べたその本名は「ダンコウバイ」でした。クスノキ科の植物で枝にいい香りをもっています。そう、ちょうど同じ仲間の「クロモジ」と香りが似ている。
 実はこの「だだらの木」、五月からはちっとも「だだら」じゃないのです。ほかの木にまぎれてその存在はほとんどなくなってしまうのは、「だだらファン」の僕としては本当に残念...。
 そして待ちに待った十月!
 どうですか、この黄色! 見ているこちらの体が染まりそうです。見回してもそこらじゅうがまっ黄色。「だだら」はその「だだら」たるゆえんを、思う存分発揮してくれています!
 この木は青空がよく似合います。「ダンコウバイ」の木陰で一人至福の時間を楽しもう!
 ん? あれは?
 よく枝を見ると何だかプツプツついていますね。大豆くらいある大きなプツプツ。あれは...。
 そう、実は来年の芽がもうできていたのです。春になると丸い芽があの黄色い花になって、とんがっているのが葉っぱになる。
 一気に夢見心地の世界から現実に引き戻されるのです。ニヤニヤと体中を黄色に染めて高揚し、夏は存在すらを忘れていた「ダンコウバイ」。着々と来年の準備をしていたのですね...。いやもう終わってる。
 何だか少し落ちこみます。僕は来年の準備何もしていないや...。反省。20081011_019_2.jpg
 こうして「だだら」遊んできた春からの半年間に毎年気付かせてもらえるのでした。
 来年はしっかりやろぅ...。

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