柳生真吾の八ヶ岳みどり通信

2008年11月08日(土) 山梨日日新聞k田掲載
冬ならでは雑木林のドラマ

さぁ、「なが~い冬」のはじまり。これから六カ月の間、冬枯れた雑木林に僕たちは包まれるのです。
 冬の訪れを僕に知らせてくれるのが「なが~い影」。雑木林は騒々しいくらいの黒い影の気配で満たされます。そう、紅葉の後で寂しいはずの林は意外にもにぎやかです。あちこちでおしゃべりしているよう。
 黒い影とはいっても怖いわけじゃないし、怪しいわけじゃない。さんさんと注ぐ太陽とのコントラストは逆にすがすがしいほどです。
 しかし何でこの影が冬の使者といえるか、ですって? だって春と夏と秋は木々の幹たちの影はまったく見当たらないですから! 冬しか見ることができない。
 分かります?
 それは春から秋は葉が茂り、花が咲き、実がたわわに実るから。幹がすっくとなが~い影になって、こんなにおしゃべりするように主張することはありません。
 これに初めて気がついたときにはなんだか自己嫌悪になりましたよ。だって、それほど庭や林を見ていなかったのですから。
 十一月はこれまで枝や葉、花、実を支えてきた偉大なる脇役「幹」が林の主役に躍り出る瞬間の季節なのです。
 それに「新鮮な落ち葉」を楽しむ季節でもあります。「旬の落ち葉」と言うか...。うん「落ちたての落ち葉」っていうのもいい。
 その落ち葉は明らかに十二月以降のそれとは違うのです。パリッパリしていて、まだつやもあるし。何より、薄化粧をしたままだ。
 この美しい落ち葉も雨や霜、そして一度でも雪が上に乗っかればもう二度とその艶姿(あですがた)には戻りません。春から秋まで主役だった葉っぱは、分解されて土に返ることを覚悟し森の裏方に身を転じるのです。
 脇役が主役、主役が裏方へ。そんな雑木林のドラマが最も劇的に変化するのが、この一見寂しく見える季節だったなんて!
 あぁ寒いなんていって部屋にじっとはしてられないや。このドラマチックな瞬間を目に焼き付けなければ!

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