柳生真吾の八ヶ岳みどり通信

2008年01月19日(土)掲載
「同志」と乗り越える厳冬

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標高千三百五十メートルにある、僕ら家族で造ってきた愛すべき雑木林。

 朝日に照らされた枕木の道がキラキラ瞬いているのは今朝強い霜が降りたから。でも日に当たって五分後にはすぐにとけて消えてしまう、そんなぜいたくな景色です。うん、今日は早起きして得したぞ!
 雪が少ないこの地域は寒いけれど外出するにはすごく楽です。コンビニに行くのだってガソリン入れるのだって、何の心配もなく車で行けるから。
 でもそれを喜んでいるのは僕ら人間だけのようなのです。
 この林に植える木は当然ここの寒さに耐えられるものを選ばなければいけません。でもどんな園芸書を見ても「耐寒性・超スーパー強し!」なんて載っていない。自分で「とにかく植えてみる」しかそれを知る方法はないのです。だから毎年、失敗の連続。
 特に驚いたのは、寒い雪国の植物がここでは育たないということです。当然大丈夫と思っていた「ブナ」や「雪割草」が何度植えても春に芽が出てこない。枯れてしまうその理由に気がつくまでに何年もかかりました。
 雪です。雪という毛布に包まれた雪国の地面は、しっとり湿った暖かい環境を根っこに約束していました。守られている。それに対して根雪のないわが八ケ岳の雑木林は土がカチカチに凍ってしまうのです。そこは根っこにとって冷たく乾燥した世界。そんな過酷な状況だったのです。
 厳しい冬を乗り越えた植物達に対して「同志」のような特別な感情が春に芽生えるのは、どこか本当の「親友」ができるときのようです。共にこの苦しみを乗り越えたゾ!みたいな。
 ただ不謹慎にも僕はいつも冬の間中悩んでしまう。たまに降る雪を喜ぶか否か? つまりコンビニを選ぶか、雪割草の無事を祈るか? と。
 
早朝、一面霜で覆われた「八ヶ岳倶楽部」の雑木林(撮影・柳生真吾)

2008年01月19日(土) 山梨日日新聞

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